Interview to Michael Schenker
by Shelly V. Harris

- Published on ClassicRockRivisted.com -

Added on 12/02/2001
日本語訳:R.B. Araki


はじめに 本インタビュー日本語版は、著作権者のShelly V. Harrisの許諾を得て、R.B.Arakiが翻訳したものですが、その内容の正確さについて保証するものではありませんし、いかなる責任も負うものではありません。一部自信の無い訳もありますし、意訳もあります。また、原著作権者Harris氏の了解無き場合は、当日本語訳の全部または一部を転載することはご遠慮ください。

信じられるマイケル・シェンカー〜伝説的ギタリストの内なる姿〜

By Shelly Harris

アンビリーバブル。この言葉は、私がマイケル・シェンカーがMSGと米国ツアー(11月25日〜12月20日)に出る直前に彼と長時間にわたるインタビューを行った際に、良い意味で理解を超えているということを示す場合に彼が好んで用いた言葉である。しかし、偶然にも、「アンビリーバブル」はマイケル・シェンカー自身を的確に表す言葉でもあった。しかし実のところ、このドイツ育ちのギターの巨匠の並外れた才能と多数の作品についてもう一度立ち止まってよく考えたとき、辞書にのっているどの最大級もその驚きの深さを適切に表すことはできない。 一方、ビリーバブルな(信じられる)ことはシェンカーが我々が現在知っているハードロックというジャンルに対して与えた深いインパクトと影響である(このことはしばしば見落とされる)。しかしながら、反論を許さない「事実」を幾つか説明してみよう。驚くほど若い時に、彼のギタリストそして作曲家としての才能がびっくりするほど明らかになったため、彼を有名にしたバンド(スコーピオンズ、UFO、MSG)の楽曲を一つでも聴いたことがある人はもちろんのこと、彼に触手を伸ばした(だが、成功した例は稀)数多くのバンド(有名なところではローリング・ストーンズ、エアロスミス、オジー、ホワイトスネイク、等)や、最も厳しい音楽・メディア評論家であってもそれを否定することはできなかった。

上記はすべて合唱隊に説教するようなものかもしれないが、シェンカーの非凡な天賦は、流れるようなテクニックによるネオクラシカルなメロディ主義及びダイナミクスと、深いフィーリング・感情・純粋さを融合させる独特な手法であり、それは、折りに触れて神がかった超現実と感動を人に与えるものである。文字通り正真正銘の「アーチスト」である彼の手法は決して複製することはできないが、「模倣されることは多い」ものである。結局のところ、シェンカーは特に80年代に最も注目された幾つかのバンドやギタリストに多大な影響を及ぼし、そうしたバンドが今度はその次にやってきたトレンドやムーブメントに影響を与えた。

もちろん彼には不可解な人という別の側面があった。まさに初期の時代に、混乱したティーネイジャーのようなやり方で、兄であるルドルフ率いるスコーピオンズを飛び出し、予測できないが雄大な海外(英国)のUFOへとまっすぐ向かっていた時からその性格は外部の観察者を混乱させ、興味を引き付けてきた。感動的なライブでの演奏のみならず、有名な彼の奇行や不可解なプロとしての活動の遍歴から「The Mad Axeman」と称せられるシェンカーの不安定さは、彼を影に包む一方で彼に光を当てるという矛盾した神秘性を作り上げた。その矛盾は今日にいたるまで様々な形で続いてきている。

まず、他の巨匠音楽家と同様に、彼の演奏や曲作りは成熟するとともにパワー、熟練度、雄弁さが増してきたものの、それに対するマーケットの興味は、彼がかつてないほど創作活動を高めて発表される作品も多かったにもかかわらず、ロックというジャンルが主流の中で退潮傾向になるにつれ減退してきた。さらに、彼がUFOとくっついたり、離れたりしたこと、マネージメントがらみの裏切り行為、最近で言えば彼のアーチストとしての活動の物質的報酬が一掃されるという破滅的な結果になってしまった結婚生活(彼が自分のウェブサイトで「32年間もレコーディングをやってきて何にも報われることがないなんておかしいと思わないかい?きっと、それは私が人を愛し、信じ、それを利用する人もいるということでしょう。」と述べている)などによる物議や予測不可能性というオーラが彼の私生活とプロとしての活動を絶えず包みこんできた。その一方で、シェンカーは深い楽天主義、人間性、寛大な精神をもった真に哲学的で話し好きな人間であることも証明されている。

しかし、他のすべての不調和を考慮するならば、音楽ジャーナリスト業界ではしばしば近づきにくいとか「難しい人間」とか一貫性がないと噂される同じ人物が、実際は全くその正反対であるということは全く驚くべき話ではない。信念、奥深さ、感情といったアーチストの様相(これらはすべてシェンカーの特徴を高めるものである)が人格というものからは程遠いということ、そして20年前に私がインタビューした同じマイケル・シェンカーが「テーブルの上の物をすべとても普通に見ることが」好きな人間だったことを考慮するならば、彼が実際はそのように全く正反対の性格である人間であるということは疑ったことはない。(興味のある方は、素晴らしいマイケル・シェンカー・トリビュート・サイトに掲載されている大昔のインタビュー及びより詳細なマイケルの歴史をチェックして下さい。)

いずれにせよ、この後に続く詳細で哲学的で(事前に警告しておきますが)広範囲にわたるインタビューから、最近のマイケルがかつてなくポジティブで、MSGのArachnophobiacツアー、ボーカリスト/ギタリスト/ソングライターであるAmy Schugarと現在行っているプロジェクト(“Under Construction”は現在www.amyschugar.comで入手可能)、彼の最新アコースティック・インスト作Thank You 4他のプロジェクトに集中しているということ、そして、人生及びプロ生活の「新しく」これまでとは違った段階へと移行し続けている彼は明らかに落ち着いて陽気な状態にあるということ、これらが「信じられること」であると分かるであろう。

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SH:MSGの最新作Arachnophobiacとアコースティック・インスト最新作Thank You 4以外に、Under ConstructionというデモCDを作りましたね。デモということは現在売り込み中?

MS:どういうことかというと、エイミーと何かやっていることをはっきり示すことが目的なんだ。基本的には既にレコードにはなっているんだけど、それをオープンで自由なものにしたままにしているんだ。もし誰かがそれを使って何かをし、ステップを踏んでいきたいのなら、それにも使えるというわけだ。もしそうでなければ、そのままだし。多分、今ある状態以外のことが起きるとは思わないけど、どのようにもできるように、あのような形でリリースし、人々にその人たちが望むような形で使わせようと決めたんだ。

SH:その作品があなたの他の作品とどのように違うか教えてもらえる。

MS:そうだね。全ての曲をアコースティック・ギターで作った訳なんだけど、違いと言えば何曲かで僕が歌っていること、女性のシンガーが歌っていることだね。最も明白な違いは、女性シンガーとの間で生み出されるケミストリーかな。

SH:あなたの過去のインタビューから、あなたの作曲にはシステムがあり、そのシステムを長年踏襲しているということだったわね。つまり、毎日リハーサルして、長い間かけて部分的な細かいアイディアを録音し、後になってそれを聴き直しながらインスピレーションを得て、実際の曲にまとめるというやり方。

MS:そうだね、ずっと同じだし、Schugar/Schenkerの楽曲についても同じやり方だだったよ。ただ、違いは全曲をアコースティック・ギターで作ったということだね。アコースティック・ギターであろうとエレクトリックであろうと作曲の方法は一緒だけどね。ただその時はThank Youを作るときと同じ方法で作曲したんだ。シンガー、つまりエイミーにエレクトリック・ギターで書いた楽曲ではなく、アコースティックで書いた楽曲を渡したということ。Thank Youなんかを作る場合は、シンガーがプロセスに加わることはなく、僕のギターがボーカルになるわけだから、シンガーに関する心配は不要なんだ。シンガーがボーカルを入れ、それに詩を付けるという場合は、どういうものが出来るかは完成するまだ分からないんだ。

SH:Thank Youシリーズ以外にもいくつかエレクトリックのインストアルバムをリリースしましたね。

MS:うん。それについても同じことだよ。僕は曲を書き、シンガーにそれを渡す代わりに、自分に渡し、インストアルバムだったら、それにギターでボーカルラインを追加していくという感じだ。だから、まずバッキング部分を作り、それにメロディを付けていくと言う感じ。

SH:そうすると、リードボーカルの代わりに別のギターパートを書いていくと言うことね。

MS:そう。ボーカルの代わりということさ。

SH:よく分かりました。それは興味深いですね。インストアルバムと言えば、あなたがどういう風にしてちょっと代わった曲名を思いつくのか不思議に思っていましたが。というのも普通は歌詞があって曲名が出てくるものでしょうから。例えば、「The Big Pictures and It’s Details」、「Born to Overcome」、「Focus On Good」とか色々ありますよね。

MS:それはThank Youの中の曲名だよね。僕のやり方はタイトルの付いてない状態で曲を聴き、曲全体になじんでいきながら、それにタイトルとしてフィットすると自分が感じるものを見つけるという感じなんだ。だから基本的には自分の中から生まれてくるのさ。例えば、マイク・ヴァーニーと一緒に作ったインストアルバムでAdventures of the Imaginationというのがあるんだけど、それにはちょっと馬鹿げた感じのタイトルを付けたかったんだ。マイクと食事に行ったときに、奇妙なタイトルを付けたいんだけどと彼に言ったら、彼はすかさず、「つまり‘Aardvark in a VW Smoking a Cigar’みたいなもの」と言ったんだ。僕が「それはいいね」と言ったら、彼は「‘An Old Man With Sheep On Mars’ってのはどうだい」というから、僕は「それもいいね」と言ったんだ。そしたら今度は「’Three Fish Dancing’なんてどう?」と言うから、僕は「イエーと」言ったんだ(笑)。彼は「マジかい?」と言ったんで、僕はまた「イェー」と答えたのさ。2分間で3つものタイトルを彼は僕にくれたんだ。お笑いだろう?

SH:本当?(笑)でも、そうしたインスト曲のタイトルはあなたのパーソナリティを示しているようにも思えるんだけど。

MS:その通りだね。人は何事でも求めることができるし、それはとても哲学的だと思うよ。

SH:もう一つ不思議だったことがあるんですが、あなたのお兄さんのルドルフが今年のはじめに(スコーピオンズの)ツアーに出ていたときに話す機会があったんですが、あなたが当時取り組んでいた楽曲を彼に聴かせたという話をその時していました。何のことか覚えてる?

MS:そうそう。UFOの前作を制作した頃の話だね。UFO用の楽曲を作るためにスタジオに入る前で、ちょうどフィル(モグ)が他にやることがあって、自分としてはコンセプトアルバム作りをやりたかったんだ。誰かにストーリー全体を書いてもらい、繰り返しがなく、次から次へと止まることなく進んでいく、そういう曲作りをしたかったんだ。それで、それをルドルフに聴かせたところ。とても気に入ってくれたんだ。彼はその一部を彼らの次回作に使いたいと言ったんだ。彼が言っているのはそのことじゃないかな。

SH:そうすると、その中にはたくさんの曲が入っているということ?

MS:そう、それはたくさん入っているよ。アルバム3〜4枚分に相当する位だね。

SH:じゃ、現時点ではその作品が今後どうなるかよく分からないわけ?

MS:そうだね。でも、その後、ルドルフが僕に電話してきたんだけど、彼はスコーピオンズ同窓会用の楽曲の一部に使いたがっていた。それは、10月に行われる予定だったけれども、10月直前になって彼が電話してきた時には、この件については進捗が遅いと伝えてきた。それでもし僕がそれを自分で使いたいのなら、心配せずに使ってくれと言われた。と言うわけで、当初期待していたのとは進捗度が違ってきている。彼らはこの件について僕が立ち往生してしまうことを望んでいない。彼らは今もスタジオに入って何かやっているようだが、実際のところ彼らが何をやっているかは知らない。

SH:ルドルフから以前聞いた感じだと、次回作の発表は彼らが期待していたほど早くはならないと思っていましたが、彼らはスコーピオンズ同窓会みたいなものも計画しているわけ?

MS:彼らはとてもクリエイティブな連中だから1ヶ月もたてば物事はすぐ変わっちゃうということさ。あるビジョンをもって何かを始めるんだけど、その後別の事が入ってくると、それはプロセス全体に影響し、より向上した形で物事を進めることになったり、方向性が変わったりとかするんだ。兄貴にはどうなっているか知らせてくれとだけ言ったよ。彼らは前進続けていて、僕は彼らがやっていることの詳細は尋ねたりはしない。兄貴には、僕が必要になったら教えてくれとか言うだけ。全てがそんな感じさ。

SH:あなた自身心配なことが色々とあると思います。これは誰にも起こることですが、残念なことに、ここ数年の間にあなたの人生において「不運な」ことや困難なことが起こっていますね。それでもなおあなたは信じられないくらい多くの作品を発表してきました。98年以降のあなたの全作品を見ると、あなたの仕事至上主義はほんとうに驚異的ですね。(Thank Youシリーズ4作品、ソロのインスト2作品、UFO2作品、MSG2作品、等々。)

MS:僕は真のミュージシャンでありクリエーターだということさ。曲作りが何よりも好きだからね。我慢ならないことは、使われるかどうか分からない状況で作曲することさ。作曲するときは常にそれに全神経を集中させるから、それがプロダクティブでなかったり、使われないということじゃ困る。曲作りを始め、集中する時は、いろいろなアイディアの中からあるものを選んで行うわけだが、それには多大なエネルギーを要するわけで、その努力に値するものを作りたいと思っている。僕の中には楽曲が無限に湧き出る泉があり、 特にスタジオを建設している時がそうだった。スタジオを作るのが夢だったし、朝起きたらまっすぐスタジオに入り、ラフな感じの曲作りではなく、ちゃんとした形で曲作りを始め、レコーディングしたかったんだ。そんな生活が夢だったけれど、スタジオ建設というのはものすごくお金のかかることだった。トップクラスのスタジオだったからね。スタジオをちゃんとした形で使うようになったら、アイディアがたくさん浮かんできた。それが多分リリースが多かった時期に当たると思う。でも、それによって悟ったり気付いたりすることがあるんだけど、作曲というのは、うーん、何て言うんだっけ、つまり、緊急で、僕をイライラさせるような、作らなきゃいけないっていう感じになる。

SH:強迫観念ということ?

MS:それそれ。まるで何かで一杯になるような感じ。

SH:確かに。

MS:それはあたかも溢れ出すような感じで、そこから抜け出さねばと思ってしまう。でも僕はそれを無駄にしたくないんだ。言ってること分かるよね。

SH:ええ、あなたはそれを自分のものにしたいわけね。

MS:そう。クリエイティブなアイデアを持ちながら、それを部屋の隅っこにおいておくなんて我慢できない。それが単に嫌なんだ。

SH:でも、あなたは他の人たちよりも真剣に集中できるという類稀な能力をもっているという意味にも取れますが。

MS:そうだね。僕にとってはもっともっとプロダクティブに感じられるから、そうしたやり方が意味があるんだ。多くの人たちは、気が向いたときにでも座ってやろうかとか、何か思いついたらやろうかというやり方をしているのは知っている。そういう人たちは座っても何も浮かんでこない。僕はそうじゃない。なぜなら環境に行き着く方法を知っているからね。君がさっき言ったように、僕が練習する時にやることは、細かいパーツやフレーズのアイデアを作り、それを何ヶ月にもわたって蓄積させていくんだ。そして、アルバムを作るときに、それらを聴き直すわけ。そうするといつも次のステップへ向けて飛躍できるインスピレーションが得られるんだ。多くの人たちは、そうした飛躍ができない。彼らはただ無から何かを生み出そうとするだけで、どこから始めて良いかさえ分かっていない。でも色々な方法があるからね。僕個人にとっては、それは常にそこにあるんだということが分かってきた気がするね。アルバムを作りたいと思ったならば、何かがそこにあるということが分かっているから、何も心配することはないんだ。もし誰かがすぐにレコードが欲しいとする。僕はその人に100%約束できる。作ってあげるよ、どんなものが欲しいんだってね。

SH:いつもそんな感じだったの?

MS:いやそんなことはない。というか、いつもそこにあったのかもしれないが、そういうやり方には気付いていなかった。

SH:そうすると、近年になってそういう風なことができるようになった訳?

MS:そうだね。それに気付くようになったのは、そう多分98年頃からじゃないかな。

SH:ロック・ミュージシャンは規律に厳しくないと思っている人がいるけど、あなたは非常に規律に厳しいようね。

MS:全くその通りだ。つまり、僕は秩序が好きだし、物事がきちんとしていることが好きだ。度を越えてはないけどね(笑)。僕は些細なことにはこだわらないけれど、秩序を保つたいんだ。何かをどこかから持ってくるときも、それをどこか違うところに置いて後で自分の周りがぐじゃぐじゃになるのが嫌だから、直ぐに元に戻したいんだ。その目的のためにも物事をファイリングするのが好きだ。必要な時にすぐ見つけられるし、自分が優先すべきことが何か分かるからね。実は1990年のことなんだけれど、悟ったことがあるんだ。これは性格にもよるけど、他の人にとっても知っておくべきかもしれない重要なことだよ。その当時、僕はやることが一杯ありすぎて、何から手を付けてよいか分からなかった。それで自分にこう言ったんだ。「マイケルよ。自分の人生の中で一番大事なことを2つだけ選んでみたらどうだ。自分が最も重要だと思うことを。」それで見出したのが、瞑想とギターを弾くことだった。それで自分にこう言い聞かせたんだ。「オーケー。毎日2時間瞑想し、2時間ギターを弾くならば、自分の一番大事なことを確保したことになるし、残りの時間は他の楽しみや自分が望む他の次元での生産活動に使うことができるじゃないか。でもその2つのことだけは必ず確保しなければだめだよ」って。直感的になんとなく分かったんだけど、そうすることによって、自分の精神生活とプロとしての生活(それは自分の趣味でもあるんだけど)を両立させることができると。その他のことは、それらを取り巻くものに過ぎない。そうしたことがはっきり分かってきて、実際にやってみるととても上手くいったんだ。それは一日を管理しなければならないという感じなんだ。子供たちもいるだろうし、一日のどこかで最も大事なことのための時間を見つけなければならない。後で時間ができるだろうなんていっちゃだめだよ。それは自分がやりたくないということだから。毎日数時間子供のための時間を確保し、これのために数時間、あれのために数時間といった感じで時間に縛られるという感じだ。そうすることによって、物事には順番があるんだということが分かるだろう。

SH:幾つかのおもしろい話題を提供してくれましたが、物事の優先順位を決め、自分の人生の中で強調すべきことを取り出す方法について話してくれたわけね。

MS:その通り。それはとてもとても重要なことだよ。

SH:別の観点からすると、趣味としてやってもいいほど愛すべきことを職業としてやってこられたと言う点であなたは非常にラッキーですね。世界中でそういう人は少ないですし、おまけにあなたはそれが極めて得意ときている。

MS:でもね。今は事務仕事をたくさんやっているんだよ。CDを自分で詰めたりとか、ホームページを作ったりとか、そういうことを他人のコントロールから自分の手に取り戻したんだ。今は何も人任せにはしてないよ。それをとても楽しんでいるしね。ファンがこんなに僕のことを愛してくれているということが初めて分かったよ。長い間他の人々がそうしたことを僕から奪っていたんだ。そうしたコネクションが今までなかったんだよ。ある日突然、圧倒されたって感じだね。30年、いや33年か、何でもいいけど、そんなに長い間経ってようやくファンとのつながりがどういうものかが分かり始めたなんて信じられないね。本当に。

SH:それに熱烈なファンがたくさんいるしね。

MS:彼らは賢く、知的で、哲学的だ。彼らは神との関わりを持っている。すごいことだね。

SH:あなたのような有名なアーティスト(特にファンにとっては本当に有名なわけだけど)が、自分自身のための場所を維持しながら、その一方でそのように感じたいというのは、興味深い話ね。人との接触を持てるという点でホームページはとてもいいですね。

MS:まったくその通りだ。素晴らしいよ。自分の事業を始めた92年からコンピュータを持ってたんだけど、僕はある人物にコントロールされていたんだ。僕は自分の音楽の面倒だけをみて、自分のことだけやってて、その人物に私の事業を取り仕切らせてたんだ。それでその人物に次のツアーでは何をしたいとかいった指示を出してたんだ。だから、ファンと会話をしてたのはその人物なんだ。でもその人物は僕の人生を大きく操っていたんだ。僕はそれに気付きもせず、そんな風になっちゃったんだ。その後、僕は自分のギター演奏と音楽だけを見てた間に、その人物は密かに僕に対するあらゆる種類の障害物を準備し、その人物の利益となるようなことを色々企てたんだ。本当に奇妙な話だね。今はようやくそうした状況から抜け出したから、初めて自分の周りに何があるか発見しつつあるよ。驚きだね。

SH:その時は本当に自分が何を見落としているか分からなかったの(笑)?

MS:そうだよ(笑)。その通り(爆)。今はどうして僕を取り巻く全ての人々が、僕の仕事をやることやそれを乗っ取ろうとすることに固執するか理解できるようになったよ。皆それで食っていってたんだよ。僕は違ったけどね(笑)。彼らはそれを私から遠ざけてたんだ。信じられないことだけど。

SH:あなたは何か開眼したって感じね。

MS:そうだね。

SH:それは悪いことではないでしょ?

MS:全然悪いことじゃないよ。まるで世界が平坦ではなく、丸いということを発見したような感じだ。

SH:支配欲が強い人にならずに、物事に気を配るということはとても正しいと思うわ。

MS:そうだね。自分の領域を知って、自分のやっていることを理解するということだね。それはそんなにたやすいことではないけれど。僕はだまされやすく、愚かだったのかなんだか分からないけど、他人がそういうことを利用するなんて思ってもみなかったし、僕がそうした人々にとって重要な存在であることに気付かなかった。そうした観点から人生や自分自身を見つめたことはなかった。僕はいつも音楽にのめり込みすぎていたから、それ以外のことが目に入らなかったんだ。ステージに上がり、拍手を浴びる。それが普通だと思っていた。皆同じだと思っていた。でも、その影に何かがあるんだ。偽りの拍手と心からの深い意味をもった拍手があるんだ。そうしたコネクションを実際に持つことによって、今はそれを認識できるようになった。君がさっき言ったように、僕は自分が何を見落としているか分からなかった。だから大丈夫だった。僕がそれから遠ざけられているということを知っていたんじゃなく、知らなかったんだ。でも今は物事を見れるようになり、ある事が起きるときには必ず理由があるということも分かってきた。タイミングの問題とかね。そして、それが物事が生じる正しく当然なありかただと強く信じるようになった。

SH:物事は理由があって生じるという哲学をあなたは長い間かけて持つようになった訳だけど、良いことも悪いことも受け入れなければならないということよね?

MS:その通り。いいことも悪いこともどちらにも感謝すべきということ。悪いことは教訓に他ならないからね。悪いことがなければ何にも学ばないよ。それらはとても相関があり、道理にかなった形で起こるのさ。人生経験だし、それが一般にいう人生というものだね。本当にそれは理解を超えたところにあるものさ。誰かが君に何かしてくれたり君を操ったりしているとしても、結局は全てには相関関係があり、複合的な意識の中での進歩の一部となる。それで社会全体が向上していく結果になるのさ(訳自信なし)。いいことであれ、悪いことであれ、一歩進んで二歩下がる、そして三歩進むといった感じで一歩ずつ全てのものが前進するということさ。

SH:ルドルフは過去に瞑想に凝っていたけど、あなたもそんなに瞑想に凝っていたとは知らなかったわ。

MS:そうだね。僕は15歳の時から兄貴と一緒に瞑想するようになったんだ。実は兄貴はマハリシの影響で瞑想を始めたんだ。その後僕たちは自伝を書いていたある人物に偶然出会ったんだ。ドイツのある有名なミュージシャン達がそれについて話していたから、僕らもそれを買って読んだんだ。それは素晴らしかったね。僕は3年半同じコースに通ったんだけど、別の機会に中途半端だったけどまた通ったんだ。結果的には同じコースに2回半通ったことになる。だから過去にたくさんの瞑想をしたことになるね。でも現在は、祈りの方により集中しているよ。基本的に僕は一日中祈っているんだ。実際に声に出したり、手を合わせたりして祈る訳ではなく、心の中で祈り、常に祈りモードにあるんだ。人としゃべっていない時は、基本的に祈っているんだ。無意識にそうなるんだ。無意識に祈ることは本当はいいことじゃないという人がいるけれど、それは正しいと思う。心から祈る方が影響は大きいからね。でも無意識の祈りのいいところは、常に無意識に僕をそこに連れて行ってくれるということさ。89年頃だったと思うけど、そうすることに決めたんだ。目覚めた時に祈っていなかったら、ましてや祈りについて考えることさえしなかったらどうしようと感じたんだ。僕はこれを何度も繰り返せば、いつか本当に実現すると確信したんだ。そして実際に実現し始めた。だから現在にいたるまで13年間続けてきたんだ。

SH:ワーオ。

MS:そう。一日中、常にね。でもさっき言ったように、それは皆がやっている「本当の」心からの祈り、心の奥深くから出てくる祈りとはちょっと違うんだ。それは山も動かしちゃうからね。僕がやっているのは、反復と自動操縦みたいなものさ。それから逃れたいと思ったとしても、常に僕に話し掛けてくるんだ(笑)。やりたくない時でもそれから開放されることはないんだ。常にそこにあるって感じだよ。それが(無意識の祈りの)良いところだけどね。

SH:何かマントラ(真言)みたいな感じね。それは心を落ち着かせる効果もあると思うんだけど。

MS:全くその通りだよ。それは「わが家」みたいなものになるんだ。家になると、安全だと感じ、深いレベルの祈りでないとしても、安全な避難場所にいれるんだ。

SH:将来的にシュラプネルからまたリリースする計画がある?それとも自分のレーベルから出すことになる?

MS:実は昔の曲をカバーするアルバムのオファーが今ちょうど来ているんだ。それはシュラプネルからリリースされることになっている。マイク(・ヴァーニー)が他の人たちとともに曲をとりまとめているところだよ。僕は行って、何曲かでソロを弾くことになっているんだ。それがマイクとやろうとしていることなんだけど、実現するのは来年の初めになるだろう。一般的な話としては、僕はMSGの新しいアルバムを作りたいと思ってるし、Schugar/Schenkerがどうなるかも見物だと思う。Thank Youシリーズの合間に、MSGをやって、Schugar/Schenkerもやってという感じかな。今のところそんなところだね。MSGの自作は自分の会社から出そうと考えている。だから、皆にはそのことを知っていてもらいたい。僕のウェブサイトwww.michaelschenkerhimself.comからしか入手できないだろうということを。

SH:それはいい話ね。今はほとんどのアルバムがwww.shrapnel.comのウェブサイトやその他色々なところで手に入るから。アルバムをどこで手に入れたらいいか探している人々より容易に探せるようにしたいわね。

MS:いずれはそういう形になると思う。今のところ僕のウェブサイトは見栄えが余りよくないし、情報もたくさん掲載されているわけでもない。Thank You 4のプロモートが目的になっている。でもいずれツアーが終わったら、サイトをグレードアップさせてもっと色々な情報を掲載するつもりだ。そのころまでには何百、何千通のメールをファンから受け取っているだろうし、それによってみんながどんなことを本当に知りたがっているかのアイディアも得られるだろう。だから、そうしたものを理解した上であればいいウェブサイトができると思う。ファン一人一人のメールを読むってことは僕にとっては初めてのことなんだ、本当に信じられないよ。ウェブサイトにどんなものを載せたらいいか見つけられると思うよ。

SH:ということは本当に全部自分でやっているの?

MS:そうだよ。全てがゼロからのスタートだよ(笑)。爆発しそうだよ。さっき君は僕が自分が楽しめること、つまりギターを弾くことをやっているから幸運だと言ったよね。でもね、ギターを弾くこと以外に今やっていることは事務作業だよ。それも楽しいけどね。信じられないだろ(笑)。今は幸せな状態にあるんだと思う。とっても楽しいよ。

SH:とってもいい感じで新たなスタートが切れた感じね。今後はさらにそれを強めていきたいところね。

MS:その通りだね。それがまさに今僕がやっていることだよ。今回は迷いの無い再出発だよ。過去に再出発した時は、別の人間が物事を取り仕切っていて、とても困惑することが多かったんだ。今度はまったく迷いはないし、自分が知らないこともないよ(笑)。すべては明らかになっていて、秘密の動機なんてないよ。とってもいいことだよ。

後半に続く〜


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